2020-01-01から1年間の記事一覧

触ること、触れること

五感の中でも、触覚の果たす役割はどこか特権的だ。他の感覚と異なり、触覚は身体全体と関わっている。日常生活の中で特段意識されることは少ないが、頭頂部から手足の指先まで、皮膚の感覚は常に働いている。この感覚に不快感を与えないことは、私たちが何…

感情の探究(II):アダム・スミス、『ミッドサマー』

前回の感情の探究(I)では「共感」という現象を軸に、「自己」の境界の曖昧さについて述べ、その曖昧さが生み出すものの一例として芸術を挙げた。今回は、共同体について論じる。それは、共感という現象が、共同体に深く関わっているからだ。ここでの共同体…

感情の探究(I)

「共感」というのは不思議な現象だ。物質的には隔たりがあるはずの他者と、私たちは感情を共有することができる。喜んでいる人を前にして何となく嬉しくなったり、悲しんでいる人を前にして何となく心苦しくなったりするのが、人間の常だろう。もちろん共感…

(主観的な)時間と芸術ついての試論

この文章は、現代人の生にとって根本的な主題である(少なくとも私にとってはそのように感じられる)「時間」と「芸術」について述べたものである。ここでの「時間」とは、個々人に内在する主観的な時間感覚のことであり、客観的な指標としての時間ではない…